「原因不明で治療法もありません。2~5年で寝たきりになり、呼吸が出来なくなり死に至ります。人工呼吸器を着けるかどうか考えておいて下さい。」このような説明を受けられたと思います。
さぞかしショックを受けられたことでしょう。「なんで自分がこんな病気に...」と嘆かれる気持ちも、将来への渦巻く不安もよくわかります。ご家族も「この先どうなるんだろう?」と不安と戸惑いの日々をお過ごしと思います。
誰にも会いたくない。夜になると、ただ泣いてばかりではありませんか?
泣くなとは言いません。が、早くいつもの冷静な貴方を取り戻して下さい。病気が貴方の全てではありません。
告知直後の今はまだ制約も少なく、比較的自由が利く貴重な時間です。大事な時を無駄に過ごして欲しくないのです。旅行に出掛けられるのも良いでしょう。
「動かない身体で生きる価値はあるのか。」ALSの永遠の命題です。実は私も告知から しばらくは価値は無いと考え、呼吸器は着けないと決めていました。家族で濃密な時間を過ごせたらそれでいいと思っていました。その頃自宅をバリアフリーに 改修しました。後で気が付いたのですが、狭い部屋にも関らずコンセントを多数付けるよう発注していました。無意識に呼吸器や吸引器の電源を気に掛けたよう です。思いと言動に矛盾が見られます。今にして思えば、生きたいという心に無理やり蓋をしていたのかもしれません。「生きていることにこそ価値がある。」 そう気付いてからは生きるのが楽になりました。
人工呼吸器を着けても旅行は可能です。海外へ出掛けられた方もいらっしゃいます。大学院で学ばれた方もいらっしゃいます。本や、句集・歌集を出版された方、講演をされる方など社会参加の方法は様々です。可能性に満ちています。
難病中の難病と言われるALSです。発症部位や進行速度もそれぞれです。今は治療法はありませんが対処法はあります。また、国内外の研究機関で原因や治療法が解明されつつあります。治療薬の開発もそんなに遠くないものと信じています。
たくさんの先輩患者さんが物理的、精神的に工夫しながら在宅で生活していらっしゃいます。ぜひ訪ねてみて下さい。保健所の難病担当保険師さんが紹介して下さいます。
ご家族と共に病気を理解して下さい。そして、周囲の人に病気の特性とそれに対するご自身の思いを説明して下さい。思いは途中で変わっても構いません。その都度説明して下さい。理解は支援につながります。
当支部でもご相談を受け付けています。
2010/08/30 景山(患者・島根県支部支部長)