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ラジカット(一般名エダラボン)のALS治療薬認可について

6月 29th, 2015 | Posted by nozomu in 情報コーナー

 当協会として早期の薬事承認を陳情していた田辺三菱製薬(株)の脳梗塞治療薬ラジカット(一般名 エダラボン)が26日、ALS治療薬として認可されたとの報道がありました。根本を治すのではなく、進行を抑制するものです。

 使用できるのは、①発症から二年以内の軽症者 ②腎臓の機能に異状が無い ③点滴で何回かのクールに分けて投与 などの条件がありますので、主治医に問い合わせてください。

 併せて医師のコメントを紹介します。

1.吉野英先生(吉野内科・神経内科医院)コメント

  本剤のALS治療薬適用に向け熱心に取り組まれてきました。

ラジカットのALS治療承認―ALS治療方法開発進展に歴史的な道標

吉野内科・神経内科医院 吉野 英

ラジカットがついにALS治療薬として承認されました。わたしが2001年8月に国府台病院で第1例目投与してから14年目です。感慨深いです。本剤点滴を受けてその効果を実感した多くの私のALS患者さんが保険診療適応を求めて街頭で何十万筆もの署名を集めて厚生労働省に陳情に訪れました。天国に旅たった患者さんたちに、皆さんの活動は今実を結びましたと、今厳かに謹んで墓前に報告申し上げます。

ラジカットが脳梗塞急性期治療剤として承認されたのが、2001年4月です。ALSに酸化ストレス、なかでもフリーラジカルが関わっているという報告は今も当時もたくさんありました。そこに出てきたのがラジカットでした。国府台病院で多くの患者さんを前にし、来る日も来る日も治療候補剤を考えていた当時、これを試さない手はないと確信しました。病院の倫理委員会の承認を受け、当時持っていた研究費をすべてつぎ込んで購入できるだけラジカットを購入し、実薬投与するオープン試験を開始しました。すると、これを点滴したら楽になるという患者さんが多くみられ、中にはいったん呼吸困難で気管切開して装着した人工呼吸器を、その後2年間も離脱できるという患者さんもいました。しかし薬効評価のためには、少数の経験では誰も納得してくれませんでした。その後オープン試験を積み重ねいろいろな進行状態の患者さんが集まると、まだ症状が進行していない患者さん、具体的には日常生活に人の手助けを要しない患者さんたちは、その後の進行がかなり抑えられるケースが多いことが判りました。

そこで製薬会社が第1回目の大規模な二重盲検試験を全国の神経内科医の先生方のご協力を得て行いました。その結果、ラジカット群で病気の進行を抑制している傾向はみられましたが、承認に必要な有意差は得られませんでした。なぜ予想された効果を下回ったか、私を含め製薬会社の開発チームで検討を重ねました。その結果、日常生活の自立度合をもう少し厳密に定義し、呼吸症状に問題なく、発病2年以内で確実にALSと診断できる患者さんにエントリー基準を絞りました。このようなエントリー基準で解析したら、第1回目の二重盲検試験でも、その後の延長二重盲検試験でも、コンスタントに有意差が証明できていました。
万を持して行われた第2回目の大規模二重盲検試験は、見事に実薬群が、ALS症状の進行を約3分の2に抑えることができることが証明されました。二重盲検実施期間は半年でしたので、おおまかにいえば、プラセボが4か月で歩行不能や食事接種自力で不可能になるところを、半年に伸ばすことができるという結果でした。その後はオープン投与のデータしかありませんが、実薬投与群はその後も1年間にわたりALS進行状況はたいへん緩やかで、急に悪化するという症例はみられていません。またALSFRS-Rという病気の進展を計測するスタンダードな方法のみならず、Norrisスケールの球症状、四肢症状でも優位な効果を認めましたし、精神的な主観的尺度を表すALSAQ-40という評価もラジカット群で有意な差を認めました。このことは、ラジカット投与により、患者さんがより病気に前向きになれるという可能性を示しています。

さて、リルテックとの関係ですが、リルテックは死亡までの期間を約3か月延長する効果が海外での治験で示されていますが、筋力、肺活量などはプラセボとかわりありません。このことが多くの専門医の先生、患者さんも効果を実感しにくい点と思います。しかしリルゾールはグルタミン酸拮抗による細胞死の保護、かたやラジカットはフリーラジカル消去と、役割は異なっており、お互いに効果を打ち消すことはまずなく、ラジカットの治験でも現実に大部分の患者さんは両剤併用しており、そのことによる副作用はみられませんでした。ラジカット治療を始めても、リルテックを服用し問題ない方は続けていただいて大丈夫です。

シャルコーが140年以上前にALSという病気を見つけて以来、ラジカットははじめて日常生活の機能障害悪化を抑制することが証明された薬剤です。なにより世界中でALSに苦しむ患者さん達に日本の製薬会社が開発した薬が効果あることを証明できたことは、一人の日本人として大きな誇りです。

しかしこれで終わりではありません。日本発のエビデンスを早く世界中のALS患者さんに治療薬として届けるために、ありていにいえば各国規制当局の承認を受けることが急務です。また治験で行われた投与スケジュールが最善とは限りません。ラジカットの投与スケジュールをよりもっと有効な効果を探索する研究があるべきですし、ラジカットで抑えきれない細胞障害を補うコンビネーション治療方法も加速的に研究が進歩するでしょう。今までも多くのALS研究進歩で明るいニュースがありましたが、今回のラジカット承認は多くの患者さんにとって7月1日から実際に効果が実感できる現実的なものです。

治療方法がないとあきらめていた患者さんはいませんか?希望を捨てないでください。


2.熱田直樹先生、祖父江元先生(名古屋大学)コメント

  ALS治療法研究で、ご活躍されています。

神経内科医からみたエダラボンのALS治療効果、安全性、認可の意義

名古屋大学熱田直樹、祖父江元

<はじめに>

このたびリルテックに次いで2番目の進行抑制薬として、エダラボン(商品名:ラジカット)が認可されました。大変喜ばしいことです。ただし、その期待される効果、副作用のリスク、実際に投与を受ける際の段取りについて、十分な理解が必要です。

ALSに対するエダラボンの期待される効果>

認可の根拠となったALSの進行抑制効果は治験で示されたものです。ALS患者に対するエダラボンの大規模治験(第Ⅲ相)は2回行われています。2回目の治験は発症2年以内、日常生活が自立でき、努力性肺活量(%FVC)が正常範囲(80%以上)の患者さんに限定して実施され、エダラボンを投与した患者群のほうが統計学的に意味のある差をもって、進行が抑制されることが示されました。進行の違いは、48点満点の重症度スケールで評価され、約半年間のエダラボン投与で実薬群と偽薬群で約2.5点の差が示されました。

日常生活に介助を要するレベルの患者さんなども対象に含めた1回目の治験では、統計学的に意味のある進行抑制効果を示すことはできませんでした。また、数年といった長期にわたって効果を維持できるのか、また生存期間を延長できるのかについてはまだ検証されていません。長期の効果や生存期間への影響は市販後調査において検証が試みられます。

<エダラボンの副作用リスク>

エダラボンは既に多くの脳梗塞患者に対して使用されており、ごく一部の患者ですが、腎機能障害や肝機能障害などの副作用を生じる可能性があることが示されています。定期的な血液検査の実施など注意が必要です。

<実際に投与を受ける際の段取り>

エダラボンは点滴で投与する薬です。2週間毎日1時間ずつかけて点滴を行い、2週間休薬することを繰り返します。従って投与を受ける患者さん、介護者、投与を実施する施設などに大きな負荷が生じ得ます。どのような段取りで点滴を受けるのか、主治医をはじめ、多職種での相談を個別に行い、体制を整える必要があります。

<おわりに>

2番目のALS進行抑制薬としてエダラボンが認可されたことは大変意義あることです。一方で、示されている効果はある程度限定されたものであること、投与を受けるにあたって、個別に体制を整えなければならない点など留意すべき点もあります。患者さん向けのパンフレットなど、資料をよくご覧いただき、主治医の先生によく御相談ください。

今後の取り扱い病院等に関しては、主治医や田辺三菱製薬に問合せください。


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