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会員さんのALS的日常 Vol.7

3月 9th, 2022 | Posted by admin in 作品コーナー

「コロナ禍での生活」

諸岡了介

 2020年春に新型コロナの感染が広がって以来、さまざまな制限が敷かれる非日常的な日常が、もうすぐ丸2年にも及ぼうとしている(2021年12月現在)。新型コロナの影響は一様ではなく、たとえば、飲食業とIT産業でも異なっているし、地方と都会でもまた違っている。そんな中、島根のALSの患者さんとご家族はどのように過ごしておられるだろうか。この2年は、支部総会も書面でのやりとりとなって交流の場がないこともあり、この機会に会員のみなさんに様子をうかがってみた。取材は2021年10月に実施したので、そのときの状況の記録として読んでいただけたらと思います。(取材・執筆 諸岡了介)

[ご自宅で療養中の方や、そのご家族のお話]

症状が進行してきたので、コロナ感染が広がる前の2020年はじめに、会社を休職することになった。ところがすぐに外出規制がはじまり、出かけることができなくなった。「身体が動かなくなる前にあちこちに行ってみよう」と思っていたが、想い出づくりもできずに時が過ぎているのが残念だ。感染者が増えると、友だちも遠慮して家に来なくなる。
 家族と同居しているが、まだワクチンを打てずにいる家族もいる。感染のおそれもあるし、面倒をみてくれている家族が感染する方が困るので、早く接種の順番が回ってきてほしい。
 また、面会が認められない病院や施設が増えたことで、在宅介護を選ぶ人が増えている。その影響で、在宅ケアを提供する事業所やサービスの人手が足りなくなってきているようで、不安だ。ALSの症状が進行すると、より多くのサービスに頼らざるをえないので。

■ 患者と家族の2人暮らしで、ほとんど自宅にいるので、生活する上でとくに困っているということはない。2020年春のレスパイト入院の際は面会ができず、洗濯物の受け渡しのために訪ねただけだったが、2021年春のときは、毎日15分以内の面会が許可されていたので、十分だった。ワクチンについては、ヘルパーさんとタイミングを打ち合わせて家を空けなければならないので、まだ迷っている。ほかにコロナの影響としては、関西や関東に住んでいる孫がもう2年くらい来られていない。

■ 自宅療養だが、新型コロナが流行して以来、面会ができなくなったため、レスパイト入院を利用していない。面会できないと、患者も家族も不安が大きくなるのがその理由。2020年と2021年は、胃ろうの交換は日帰りの外来で行っている。レスパイト入院をしないことで、家族は外出ができない状態が続いている。ワクチンについては、往診の先生にしてもらった。
 全体として、大きく困っているわけではないが、年に1度訪ねてきてくれる友人が来られないことが非常に残念である。

■ ワクチン接種なども問題なく済ませたが、2021年夏にレスパイト入院の日数が5日間に減ったときには、たいへんだった。大荷物で時間をかけて移動をしても、またすぐに帰宅なので、負担が大きかった。入院中の面会については、1名限定の短時間ではあったが、毎日可能だった。

[病院で療養中の方や、そのご家族のお話]

■ 基本的には、複数の病院を転院しながら入院生活を送り、ときどき自宅へ帰るというサイクルで過ごしている。病院では、2020年2月下旬から面会禁止となった。最初の緊急事態宣言が解かれた6月下旬から、家族1人が週1回、平日の昼間10分間限定で面会ができきるようになった。このときの対応は、病院によってまちまちであった。
 感染が再拡大した7月31日から再び面会禁止になったのち、9月下旬には週1回10分間の面会が許可されるようになったが、2020年12月にみたび面会禁止となってからは、現在(2021年12年)までずっとその状態が続いている。これまでもインフルエンザの流行で面会禁止になったことはあったが、ここまで長期にわたり、先の見えない規制ははじめてである。
 同居している家族も、ウイルスを持ちこまないよう、人一倍注意しており、外食などはしていない。また、こういう状態になってから、県外の大学に行っている子どもとはまったく会えていない。自宅療養のときにはヘルパーさんや看護師さんがおり、そちらに迷惑をかけるわけにもいかないので、島根に帰省することは難しい。
 この2年間、ALS協会の支部総会で集まることができていないし、新規の難病患者さんは対面での相談の機会もなく、困っているのではないか。新型コロナのせいで、ヘルパーさんがたん吸引をできる資格を取得するための研修が行われておらず、人工呼吸器を着けた患者をケアできるヘルパーさんが増えてないことも心配。

■ コロナ禍がはじまって以来、入院している患者には、月に1度ずつしか会えていない。当初は面会可能な時間は30分間だったが、その後15分に短縮され、シャット・アウトとなった時期もあった。2021年春以降はずっと、月に1度5分間のみの面会という状況が続いている。往復1時間をかけて面会に行っても、5分間だけしか面会できない。やはり、顔を見て話をすると患者も安心するのだが、5分だけだと話ができない。それで、手紙を書いて看護師さんに代読してもらったり、好きなテレビ番組をつけてもらえるよう、電話でお願いをするなどしている。病院のケアはしっかりしているので、そこは安心である。
 面会制限がはじまって、患者の家族どうしが病院のロビーで話をするといった機会もなくなった。保健師さんを訪ねたりすることも難しくなり、人と人との交流が減ってしまった。孫を含めた、東京の息子家族も2年ぐらい帰っていない。息子当人も、「島根で生まれて島根で育ったものが、どうして島根に帰るとよくないもの扱いされるのか」とこぼしている。

■ 2020年冬からは、入院している患者にまったく会えない状況が続いている。2021年秋に一時期、危篤状態になったときは、毎日10分間の面会ができるようになった。その後、患者の体調が回復してからはまた、面会は禁止となった。家族が面会に来ると、検温や消毒などで人手をとられてしまうというのが、病院の方の状況らしい。その代わり、タブレットを利用したリモート面会の機会を設けてくれており、一親等以内の人が30分、病院側が設けた時間枠・人数枠の範囲でリモート面会ができる。リモート面会でも患者が反応していることが分かるので、ないよりはあった方が全然良い。ただ、面会ができないことで認知症が進むのではないかと心配だ。


【取材をしてみて】 もちろん、新型コロナ禍の下でがまんを強いられているのは、日本国民全体や、あるいは世界中の人たちみんなであって、ALS患者や家族だけではない。しかし、とくに症状の進行が進む患者さんにとって時間の貴重さには特別なものがあり、「今だけはもう少し我慢を」といった言い方の意味も変わってくる。取材を受けてくださったひとり、吉岡哲也さんが、「コロナも深刻な病気にちがいないけれども、こちらはこちらでALSなんだという気持ちもある」と漏らしておられたのも印象に残っている。
 もっとも気に掛かっているのは、入院生活を送っている患者さんとご家族がほとんど会うことができない状況が1年以上続いていることである。感染者数が激減した2021年12月現在も、まだその状況は変わっていない。もっとも、患者さんやご家族の方の多くは、会えないことをたいへん辛いと感じながらも、こうした状況下では面会規制もしかたがないと受けとめるとともに、日々コロナ対策に努力し尽力している病院・施設の関係者に感謝の気持ちを述べておられた。
 それでも、「家族と会う」ということは、人間らしい生活の基本として、基本的人権の一部のはずである。万全な新型コロナ感染対策と両立する程度に面会規制の緩和ができるよう、社会全体としてサポートすべき問題ではないだろうか。Go To トラベルやGo Toイートも大事と思うが、「Go To ファミリー」も同じように力を入れてほしい。
 面会規制の緩和に関しては、島根県知事・島根県健康福祉部長に対して、2021年6月に協会支部として陳情書を提出したほか、11月には再度、今回取材した内容に基づいたレポートと要望書を送付した。しかし、12月現在のところでは、動きはないようである。一方、11月にそのレポートを同時に送付した山陰中央新報の方では、この問題を2度にわたって大きく取りあげてもいただいた(11月12日および29日の記事)。この『JALSAしまね25号』が発行され、みなさんがこの記事を目にしている時点では、新型コロナの感染者がさらに減少しているとともに、面会をはじめとする各種の行動規制が問題なく緩和されていることを期待したい。

取材協力に応じてくださった患者・家族のみなさまには、改めて御礼申し上げます。

参考:新型コロナに関する状況の推移

2020年2月ダイアモンド・プリンセス号が横浜に入港/北海道で学校閉鎖
2020年3月WHOがパンデミックを認定/東京五輪延期決定
2020年4月7都府県を対象に緊急事態宣言
2020年4月9日島根県で感染確認1例目
2020年4月16日緊急事態宣言の対象範囲を全国に拡大
2020年5月14日39県で緊急事態宣言を解除/25日には全面的に解除
2020年8月9日松江市内の高校で91人のクラスター感染を確認
2020年12月イギリスで変異種の感染拡大
2021年1月7日関東4都県に緊急事態宣言(2度目)
2021年1月13日緊急事態宣言の対象を11都府県に拡大
2021年2月日本でも医療従事者にワクチン接種がはじまる
2021年3月緊急事態宣言を解除
2021年4月~9月宮城・大阪・兵庫からまん延防止重点措置、後に10都府県に
2021年4月25日~6月20日4都府県に緊急事態宣言(3度目)、後に3県追加
2021年7月12日~9月緊急事態宣言(4度目)、後に21都道府県に拡大
2021年7月~9月東京オリンピック・パラリンピックを無観客で開催
2021年8月島根県の感染確認者数は月間で607名(過去最多)
2021年10月1日半年ぶりに緊急事態宣言とまん防が全面解除/感染者急減へ
2021年11月1日国内における1日の新規感染確認数が16ヶ月ぶりに100人を切る
2021年11月30日新変異オミクロン株への対応として、外国人の入国停止


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